甲田守の『根こそぎ掘りデー』第16回 高校の同級生と今を生きる。

先日『卒業式、実行』が無事に終わった。舞台には高校の同級生が多く駆けつけてくれた。観に来てくれた一人が個展を開いていると聞く。高校の同級生と会う機会はそう滅多にあるものではない。行くことにした。
おっしーとちかごん。個展を開くのがおっしーで一緒に訪れたのがちかごん、三人で集まった。開催地は原宿の小さなカフェ、絵本の読める喫茶店『SEE MORE GLASS』というところだ。原宿のとあるビルの地下に位置しており、こんなところにこんなカフェが…と思わせる。店内には絵本がぎっしりと並べられており手に取って読むことができる。おっしーは以前にもここで個展を開いている。どうやっておっしーが店主と知り合ったかはわからないがどうやら常連のようだ。
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おっしーは絵本が好きなのだと思う。今回の個展『猫とダイオウイカ』では飾られた絵の横に文章が添えられていた。猫とダイオウイカがフランス料理店を経営するというストーリー。おっしーが描く絵には猫が頻繁に登場するがダイオウイカは今回が初めてだった。その由を尋ねると、ある日掃除機に振り回される自分のその姿がまるでダイオウイカみたいだった、という出来事に着想を得たらしい。おっしーらしい発言だなと思った。
その日は個展の最終日で閉店後は三人で絵を片付けた。そしてそのまま皆でご飯を食べに行くことにした。
同級生と集まれば学生時代の昔話に花が咲く、というのが一般的な流れかと思われる。過去について語るのは私も好きだ。当然のように昔の話へ持っていこうとする自分がそこにはいる。けれどそんなことを考えているのはおそらく私だけで他の二人は違ったのかもしれない。そして私も学生時分の話題がうまくできないことに自分でも気づく。それもそのはずで私たちは特に仲が良かった三人組というわけではない。三人で遊んだ経験など今の今までなかった。だからなのか『過去』の話はほとんどといって出ない、というか出すことができない。話されるのは『今』なのだ。二人が話す今はとても輝いていた。
高校の頃、うまく友人関係を築けなかった私は今対等に人と向き合って関係を築こうとしている。私は過去に花を咲かせることはできないが結果的に今がきらめく人生を送ることができているのかもしれない。