「方言指導の甲田さんです。」
「よろしくお願いします。」
たくさんの人達の中で紹介されるのは気恥ずかしいものです。
『方言指導』の初日は飯田橋のとある飲食店から始まりました。
前の撮影が押しており集合時刻は20時半に変更、現地に到着すると周辺には何台もの車両が停車しておりました。店内では色々と準備が始まっているようです。私は制作スタッフとの挨拶を済ませ用意が整うまでバスでの待機を命じられます。私が方言指導を行う役者さんはどうやらまだ現場には来られていないようです。
本日撮影するのは全部で2シーン。出演者2人がお店に入るまでが1つと店内でが1つ。お店の中では店員役もいらっしゃいますので出演する役者は合わせて3人ですがシーンのメインは2人です。
1人は私が担当する平沼さんでもう1人が成海さん。数日の間ですが『方言指導』はこのお二方の共演を追っていくことになります。
事前に手渡されていた台本を車内にて復習していたところ平沼さんが現場に到着したようです。いよいよ『方言指導』が始まります。
自己紹介も兼ねまして平沼さんには私の実力を包み隠さず披瀝することにしました。というのも初めての『方言指導』は幾分不安だったからであります。自分には方言指導の経験がないということ、大阪出身ではありますが2005年からは千葉に移住したためそこからは関西弁のアップデートがされておらずバージョンがやや古めだということを正直に打ち明けました。
平沼さんは関西弁に対して真摯でした。そして私を信じてくれました。上に述べたことは方言指導に自信がない私のエクスキューズが含まれている、私はもっと自信を持ってもいいのです、そう思わせるには十分なほど平沼さんは私を信頼してくれたのであります。みっちり細かく丁寧に関西弁の方言指導を行っていきます。
撮影の序盤はやはり関係性が上記のようには成り立っておりませんでしたので上手くいかない箇所も散見されましたが終わりにかけては良い状態を築き上げることができたのではないかと思っております。
さて、関西弁についてですが、私は今まで関西出身ではない方が関西弁を話すのはほぼ不可能だと思っておりました。映画やテレビドラマ、漫画についても関西弁は多くが誇張されて使われています。意図的ならまだしもおそらくそうではないものが大半でしょう。確かに一朝一夕で身につくものではないですが、完璧とはいかないまでもあるポイントさえ押さえればそこそこの『関西人』になれるのではないか。今回の経験を通して私はそう思うようになりました。
先にも述べましたが狙ってるなり意識的ならまだしも無意識に誇張された関西弁が創作物で目につきます。
私が思うに創作中の『関西人』が無理に関西弁だけを使う必要はないと思うのです。ときに関西弁を使い、ときに標準語も使う。そうすれば、はい簡単『関西人』の一丁上がりです。
まずいのはチャンポンした(?)『似非関西弁』を使うことです。これは実際に存在する関西人が使うことはまずあり得ない、と私は思います。なので使ったら瞬時に関西人にそれがバレます。バレるならまだしも萎えることもしばしばです。
要は関西弁は使うなら使う、使わないなら使わないとキッチリした使い分けが大事なのです。ワンセンテンスに混ぜ込まなければ大丈夫!
とは書いてみたもののはてさて的を射ているのか…。門外漢の戯言に過ぎないのではないか…。
いずれにせよこの『似非関西弁』さえ外せばもうあなたは『関西人』!
えっ?それができたら苦労しないって?
まあまあそう仰らずに。
品詞のアクセントを一つ一つ丁寧に押さえていけばそれは容易に防げるはず。千里の道も一歩からです。
さて実際に指導に当たるわけですが果たしてどのように行えばよいのか。
関西弁に限らず指導自体の経験に乏しい私はそこにまず戸惑いました。(上で述べた関西弁についてのうんたらかんたらは全てを終えてからの感想でありますので順序が相前後しますがそこはどうかお許しいただきたい。)
まずは役者さんに該当箇所を読んでいただき徐々に徐々に細かいところを修正していきます。間違っているであろう部分を私が読み直し、あとから倣って読んでいただくことにしました。
初めから一発でできるところもあれば何度読んでもなかなかできないところがでてくる。
この差は関西出身の私からすればわからないところですが、そして一般的に標準語を使う方全てに当てはまるのかもわかりませんが、どうやら難所が存在するようで指導する側としてはやり甲斐があって興味深いです。
関西弁や方言についてはマイノリティの視点等を交えてまだまだ語りたいところではありますが(もちろんこの撮影についてもですが)今回はこんなところで筆を擱くことに致します。
そして次回のテーマはズバリこちら!
『地方のフタ〜躍動する関西弁、方言としての地図、その変遷〜』です。
どうぞご期待ください。
甲田守の『根こそぎ掘りデー』とは…?
休日の行動スタイルが基本的に「座っている」で有名なネコソギこと甲田守がホリデーに誰かを誘っては「座っている」からの脱却を図るという、知的かつ高尚な難解プログラミング企画………ではなく単純に誰かを誘って遊びに出かけるという、ただそれだけの企画である。隔週月曜更新を予定。